鴛鴦呼蝉庵日乗
2005.05.20  「虚構について」

 修羅場です。初日は欠席することにしました。準備不足ですが、この3月以来の多忙さはいい加減、心理的に暗い影を落としています。

 本の紹介もあるのですが、なかなか選べません。今のところオーウェルの「1984」、岩城宏之の「フィルハーモニーの風景」、高村光雲の「幕末維新回顧録」を予定していますが、もう少し、クセのある本を選びたいと思います。

 本日思い考えた文章。

「虚構について」
  世の中には嘘が満ちている。「どうしよう、試験勉強ぜんぜんやってない」と言いつつ自分よりもいい得点を取る友だち。「君を永遠に愛する」と言いつつ寿命はあり、別れることもある。「君をずっと離さないよ」と言いつつ風呂やトイレでは別れる。「いつか私を白馬の騎士が迎えに来てくれる」、本当に馬に乗ったコスプレ青年がいたら滑稽である。
  それでも人は嘘を乗り越えて嘘の世界を楽しめる。ディズニーランドなどでミッキーマウスが歩いていたら、そのかわいさに抱きしめてしまう。その中には汗にまみれて湿疹に悩んでいる青年が必死に演じていようとも。その嘘、文学では「虚構」と言うが、その虚構を楽しむとはどういうことなのか。語り手、作り手が描いた世界である虚構を私たちはどのようにして楽しむのか。そして虚構とは私たちにどのような価値を与えてくれるか。
  芥川の「蜘蛛の糸」はその虚構を見事に教えてくれる。例えば、「蜘蛛を助けた事があるのを」「何しろどちらを見ても、まっ暗で、」などは見事な虚構である。虚構であるからこそ面白い、楽しい、深い世界を感じることができる。
  本文から虚構であるからこそよい部分を探し、読者と虚構の関係について考えを深めよう。決して「蜘蛛の糸」は悪い作品でない。虚構があるからこそ、嘘があるからこそ、その嘘を楽しむ。そこに虚構を受け入れるだけの力を私たちは持つ。その力をもう一度見直していく。

[今日の記録]
睡眠時間:4:30就寝、7:00起床、2:30時間。
最高気温:22度

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