2006.03.09 北川智繪さんの「おこんじょうるり」 |
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話芸舎の北川智繪さんの公演を見てきました。毎年、ご案内はいただいても、最近はいろいろな重なりで行けずにいて、ようやく今回時間が取れたので、行ってきました。というのも、演目が「おこんじょうるり」ですので。北川さんの十八番です。それと、娘さんも参加ということで、それならなんとか都合を付けてということになりました。 北川さんは、声優としてのメディアのお仕事をそろそろ終えて、後進育成に専念する予定なのですが、どうしてもと請われてなさったのが、「虫師」。虫の字は違いますが、これで。それもわずか二言なのですが、それでもどうしてもここは北川さんだということだそうです。「虫師」は有る意味では実験的な作品であり、完成度の高いアニメで、深夜の時間帯にするのは惜しいぐらいです。ドラえもんの「ミニドラ」、左門豊作の母、その他多くの作品の声優を手がけ、女優としては「踊る」のテレビシリーズ、「金八先生」などに出演していた、名優でもあります。「踊る」の時は、声ですぐわかりました。その北川さんに声を頼むというのも、実は声だけではないと思います。 今回、「おこんじょうるり」を見たのですが、それは物語に迫ってきました。それは「芯がある」のです。声優というと一見、声色を使うとおもいがちですが、そうではなくて、物語を解釈して、声の使い方や間やいろいろなことを考えて表現していきます。そして、聞き手に、その物語の世界を創造させていく、聞き手に作用する力を持つのです。聞き手がその場面にいて、そして考えさせる、そのような力を、声や手振りや身振りで伝えること、それが朗読、いや口演、話芸の本筋です。その本筋を生きているのは、落語で言えば、古今亭志ん生や古今亭志ん朝などの人たち、朗読で言えば幸田弘子さんなどの人たち、そういう人生を背負った人たちです。北川智繪さんの朗読は朗読という領を超えた、話芸です。心を伝えているのです。それゆえ、「おこんじょうるり」を聴いた今日の聴衆も、涙を流した人は少なくありません。 北川さんと、大塚講話会のことと、どこか重なります。倉澤栄吉先生の言葉が、北川さんと重なった一日でした。 [今日の記録] |
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