発想・思考・表現−国語表現の教材案−

(発表資料)


全国高等学校国語教育研究連合会 第31回研究大会東京大会「研究発表」  1998.11.13 品川 きゅりあん
黒川 孝広

■基本的な考え方

1.言語生活の変化ともに教科内容の変化へ

・日常の言語生活には大きな変化はない 「話す」「聞く」が中心
・国語科の指導は大きく変化しない 「読む」「書く」が中心
・「読み」「書く」「話す」「聞く」の領域の問題
−言語活動を「個」のレベルでの機能面について検討したもの。
・教育課程作成時の問題
・教課審、中教審に教育現場の声と国語科教育研究の声が届いていない。
・表層的な問題により課程が変更されやすい。
・国語科教育研究が現場に浸透しない問題点の究明不足。
・表現指導は「理解」と「表現」の混在が必要 内容・受け手・機会
−「表現」には「理解」を伴い、「理解」には「表現」を伴う。
−「書く」「話す」ことは自分を知ること。
・教育観の変更を
−旧)知識を吸収が中心
−新)学習(記憶、創造、表現など)の仕方中心 但し知識は必要
・指導する側の指導方法論の問題 極端に受け取られやすい
−例)文学教育と言語教育、言語技術
・ビジュアル化の流れ
−視覚認識が認められた時代 教科書にも挿し絵が多い
・非言語を取り扱うこと ビジュアル表現の有効利用
−非言語→言語 例)絵を見て鑑賞を書く/話す
              日常の生活について書く/話す
−言語→非言語 例)物語を読んで絵を描く
              物語を演じる(身振りなど)
・今までにない表現の可能性
・機器の発達・普及−コピー、ワープロ/パソコン、ビデオ、写真、テープレコーダ、CD
・「早い」「短い」情報化
・表現する機会を増やす 表現学習が知識伝達になりやすい

2.「クイズ」的思考から「パズル」的思考へ

・理解力、想像力、発想力不足 社会が若者に求めている力
−「理解」はすでに国語科では行なわれてきた
−「発想」を取り入れる授業は少ない
・指導方法の検討 一問一答方式から一問多答方式へ
−思考のプロセスを学習 さまざまな過程を通してさまざまな答えを導く
・左脳と右脳を鍛える学習 国語科指導に科学的究明を活かす
−左脳−左半身、数学的論理、発話、読書、筆記、推理
−右脳−左半身、顔の表情の認識、奥行きの感覚、創造性、音楽性、直観
・2時間でできる指導を 授業時間の減少

3.一対一から多対多への指導へ

・学級を有効利用する表現指導へ 一対多、多対多の授業へ
・「技法」と「問題意識喚起」の指導 「何を」と「どう」の指導
・「技法」は小学校から中学校低学年までが効果的である。
・「問題意識喚起」は中学校高学年から高校・大学以上が効果的である。
・どちらかではなく、両方とも大切ではある。
・これからの教材、指導方法
・個々人の意見を尊重
・自らの創造的な面を認識
・教室内の意見を理解
・新たな興味や探求の開拓

■指導方法

1.教材プリントに記入し、提出させる。
2.何名かの作品をプリントし、配付する。
3.よかったものについて、その理由を根拠を挙げて説明する。
4.全体を通して、よかったものを帰納し、発想や表現の方法を分類する。

■発想・思考・表現 おおまかな分類

発想 発想力・創造力に重点を置いたもの。
思考 論理力に重点を置いたもの。
表現 書く、話すなどの技法に重点を置いたもの。(狭義の表現)

■教材案−発想

○発想−1「風桶論−結合の発想力−」

作業:「風が吹くと」から続けてその過程を文章で推理する。
評価:発想の大胆さ。過程の多さ。
教材:「次から次へと結びつける発想力を養う。典型的なものに「風桶論」がある。@風が吹くと砂ぼこりが立つ。(略)F桶家が繁盛する。[風が吹くと桶屋がもうかる]」「風が吹くと→」
生徒作例)
風が吹くと窓がガタガタする→ガタガタとゆう音で赤ちゃんが起きる→赤ちゃんが目を覚ますと泣きはじめる→泣き声を聞いて母親がかけつれると赤ちゃんにミルクを与える→ミルクを与えすぎると肥満になる→風が吹くと肥満になる

○発想−2「富士山−結合の発想力−」

作業:最初と最後が決まっていて、その過程を単語で連想する。
評価:単語の多さ。複線の多さ。
教材:「今回は単語で結合させてみる(複線型でもよい)。全体で20語以上使用のこと。例)富士山→雪→白い→ダイコン」

○発想−3「漢字語句−結合の発想力−」

作業:漢字語句の熟語の頭の文字と末尾の文字をしりとり式に結合させて、単線で熟語の構成分析能力を伸ばす。
評価:熟語の多さ。元にもどらなくてもよいことにする。
教材:「漢字の二字熟語を例のように結合させ、ぐるっと回してみる。(20語以上)ただし、辞書は使わない。造語をしない。固有名詞を使わない。例)・・・結合→合体→体力→力点→点画・・・」

○発想−4「象を冷藏庫に入れる方法」

作業:「象を冷蔵庫」に入れる方法を考える。現実的、非現実的でもよい。
(この後で分類すると、より発想の観点が理解できる。)
評価:発想の多さ。発想の豊かさ。
教材:「象を冷蔵庫に入れる方法を考える」
生徒作例)
冷蔵庫を「冷象庫」と名前を変える。象を切って入れる。象の子どもをいれる。冷蔵庫を大きくする。象をスモールライトで小さくする。象の写真を入れる。

■教材案−思考

○思考−1「ホジショニング法−分類と分析」

作業:マンガ雑誌、飲み物、食べ物、店などをホジショニングで分類し、傾向をつかむ。
評価:素材の多さ。分類・分析の深さ。
教材:(略)

○思考−2「ウルトラマンとドラえもん−反転の発想力−」

作業:ウルトラマンとドラえもんについて、良い点、悪い点を考える。
評価:指摘の多さ。
教材:「ウルトラマンとドラエモンを意味付ける。正・反で行う」
生徒作例)
[ウルトラマン]正)正義の味方。反)足場を確保するためにビルや駅を壊している。
[ドラえもん]正)のび太をいましめてくれる。反)道具が違うのは無駄使い。

○思考−3「ヒットの理由−本質と対象−」

作業:テレビ番組や歌手・バンドなど流行のものについてヒットした理由を考える。素材の問題点、享受する側の問題、社会や時代環境の問題について分析する。
評価:分析の細かさ。
教材:「ヒットの理由を考える。そのもののよさ、受け手が期待するものは何か、時代や社会状況の影響はあるかの3点から考える」

○思考−4「あなたも経営者−創造力・企画力−」

作業:指定した場所に店を経営することにして、その企画を考える。考える内容は、販売(営業)内容、商品、売価、客層、レイアウト、チラシなど。
評価:店の独自さ。計画の緻密さ。
教材:(略)

■教材案−表現

○表現−1「名文・悪文ノート」

作業:日常で気付いた表現を書きとめ、それについて、○×などで評価し、感想を書いていく。
評価:素材の範囲の豊かさ。感想の多さ。
教材:「名文悪文ノートについて
  目的 表現力をつけるために身近な表現を探し、発見し、言語への興味を持つ。また、それを自分で評価することで、自分の評価主体を確認する。そして、自分で表現を書写することで、自分のノートを作成することに興味を持ち、自らが学習する態度を身に付ける。
方法
@発見 日常生活の中で、あらゆる表現を探し、発見する。本や雑誌などの文字言語や、テレビやラジオ、音楽、会話などの音声言語の中から自由に選ぶ。たとえば、歌詞でも電車の中の広告でもかまわない。但し、日本語のものとし、外国語の場合は日本語訳をつける。
A評価・感想 自分でいいと思うか、よくないと思うか判断する。評価は○×を基準とするが、どちらとも言えないものについてはあいまいな評価のままとする。そして、なぜその評価をしたかの理由や感想などを書いておく。
B記録 ノートを一冊用意し、そのに毎日一つずつ表現を書き写す。項目は、通し番号、日付、評価(○×など)、表現、出典、感想。
生徒作例)
○「一生懸命な命の側にはいつも死があり、適当な命の側には堕落がある。」畑正憲
 すごい重みのある言葉だと思う。頭にガンッと来た。
○「大人は自分の子供の頃の事を忘れています。この忘れるというのは、子供の心を持っていないという事ですね。最近、一生懸命何かに打ち込んだり、思いきり泣いたり笑ったり、怒ったり、感動したりしましたか。」ロバート・ハリスのラジオ
 自分では、絶対そんな風にはならないと思っていたのに、さっき気づいてしまって哀しいです。自分では「子供心を忘れた大人」にはならないと思っていたのになぁ。今の私は、その心を忘れかけています。先日、中学時代の同級生に会って話をした時に、「家で普段何してるの?」ときかれ、「えっ・・・・。そうだね、ご飯食べて、ちょっと勉強して、雑誌読んで、音楽聴いて、寝てる。」と答えて、はっとしたのです。なんだかつまらない日々を送っているのだなぁと。途中までしかクリアしていないファミコンのカセットの全クリに毎日を費やす方がよっぽど充実していると言えます。
 その反面友達への手紙とかには、勢いのままその時の自分を書きつけていて、その点では一生懸命でいられているのから、まだ救われていると思ってしまいます。皆は、日記−とまではいかないけれど、その辺の紙に自分の感情や考えている事を書きつけたりしないのだそうです。それは驚きだ。私の机の引出しの中には、そういった事を書きつけた紙が何十枚と詰まっているのに。自分の気持ちを言葉に表すのも面倒だと思って(かどうか知らないけれど)、そのままにしておくなんて、それは大人へ向かっている兆候にちがいないと思います。
○「ひざこぞう」
 漢字で書くと膝小僧。なんで小僧なんだからわかんないけど、膝小僧なんだよね。考えてみると笑っちゃう。そうそう、この前友達とはなしてて、私がざんぶりっていったら、何それってすごい笑われた。これはお風呂に入って、体を洗わないで湯船だけにつかってでること。こうやって説明したら、また何それ、そんな言葉しらないよって笑われた。どうやら、このざんぶりって言葉はどこから生まれてきたんだか知らないけれど、うちだけで使っていた「うちご」だったらしい・・・・。

○表現−2「桜の花びら−観察力と描写力−」

作業:桜の花びら1枚を実際に見て、文字だけで表現する。次に友だちが書いたものを見て、その通りに描いてみる。
評価:友だちがみてわかりやすいかどうか。わかりやすく相手に伝えるということが理解できたか。
教材:(略)

○表現−3「黒板を爪でひっかく−表現の可能性−」

作業:身の毛もよだつ表現を書く。素材に依存しないで、文字だけで相手の感情を左右できること知る。
評価:表現の可能性について理解したか。
教材:(略)

○表現−4「お願い!いや!−依頼・ことわり・説得−」

作業:依頼、ことわり、説得について具体的に書いて、話す。友だちが書いたものを読んで、実際に対面で話す。
評価:依頼、ことわり、説得には論理的と非論理的と両方あることを知る。
教材:(略)

以上

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