鴛鴦呼蝉庵日乗
2001.9.13 歌舞伎観劇記「明君行状記」
   さて、9月に入って細かな業務が続きまして、本来私がしたいことができずに困っていますが、息抜きに歌舞伎を観てきました。歌舞伎評論については、渡辺保さんが現代の第一人者と認定していますので、その劇評とまではいきませんが、思いつきでつらつら書きたいと思います。今回は歌舞伎座の9月大歌舞伎です。
明君行状記
 これは、橋之助が善左衛門の若さゆえの批判性の非論理性をみごとに演じていました。最後の3場では光政とのやりとりがみごとでした。ただ、作品として、最初に善左衛門の苦悩が表現されなかったのは、その前提条件をうまく示せなかったからかもしれません。役者の方ではなく、演出のほうで工夫があったらよかったと思いました。光政の梅玉ですが、ちょっとこれは困りました。途中、「権左衛門」という所を「善左衛門、いや、権左衛門」と言い間違えて直したのです。梅玉は熱演するときはいいのですが、気を抜いた演技も多く見られ、そのときはたいがい台詞が入っていないのです。以前、金比羅歌舞伎を観たときも、わざわざ遠路から来た年輩と若手の女性の方に向かって不自然なガッツポーズをしたことがあり、観客から声が漏れたことがあります。私もその場面を見て少々不愉快でした。演技に必要のない仕草で、不愉快な印象を残したことがあります。それ以降の梅玉は気の乗らない演技が多く、もちろん歌右衛門のことがあっていろいろ大変だったかもしれませんが、それを間引いてもどうかなと思います。
 さて、話の方はお笑い風になってしまって、光政の苦悩を描ききれなかったのが残念です。今後の課題でしょう。
俄獅子
 松江と歌昇でした。この二人の舞踊はきっちりしていた、見応えのあるものです。どちらかというと松江の方が気が入っていたように思えます。松江は町娘の演技はよいのですが、貴人は演じきれないところがありました。今回は新しい松江になるきっかけとなるといいと思っています。
三社祭
 橋之助と染五郎でした。橋之助は見事な舞踊です。最近では気の入ったなかなかのものです。必見でしょう。染五郎もそれについて必至に踊っていて、最近の舞踊ではなかなかよいものではないかと思います。踊り終わった橋之助の表情にすがすがしさを感じました。
一谷ふたば軍記
 やはり吉右衛門は見事です。観ていて涙を誘うところがあり、当代第一の歌舞伎役者は中村吉右衛門でしょう。どう見ても、その演技力の大きさ、繊細さ、台詞の妙、すべて第一です。ただ、「熊谷陣屋」に比べて直実の心理描写が少ないので、話として物足りなさがあります。これは、役者よりも演出の問題でしょう。
藤娘
 芝翫です。さすが、若い娘の表情を肩で表現できる役者です。ちょっと体型的に難しいのですが、表現力はなかなかのものです。
  ◇
 今日の収穫は橋之助の舞踊、染五郎の伸長、吉右衛門の力量でした。今月はこの午後の部についても行きますので、それも観劇記としてそのうち書いておきます。
 ただ、歌舞伎座の桟敷席の足の入れるところですが、ちょっとせまいのと、座布団が薄いから、腰が痛くなります。せめて、座椅子は数段階にリクライニングできるようにして欲しいですね。次回は椅子席ですので、その点は安心です。そういえば、歌舞伎座のロビーが模様替えしました。マイナーチェンジですが。聖護院のわらび餅はよさそうです。まだ食べていませんが(笑)。
  ◇
 歌舞伎座の帰りはいつもどおり中村屋の栗あんぱんを購入し、そして、銀座で食事をして帰りました。銀座での食事はここ数年いつも同じ場所です。まだ常連とは言えませんが、銀座に行くたびにこの店に行くのが楽しみです。店の名前は公開しません。混雑すると困りますので(笑)。
 一つ発見したのが、銀座の岩手県の物産コーナーに「芽吹き屋」の御菓子を販売していました。この「芽吹き屋」の桜餅、ずんだ餅は絶品です。ときおり食しますが、なかなかの味で、福山雅治も好きだとか。一度お試しあれ。岩手県のコーナーには、「かもめの卵」もありました。これは「ミニ」の方がおいしいですね。
 もう一つが「魚寅」。今まで噂できいていましたが、実際の店をみたのは始めてです。山形屋のならびにあります、魚屋さんです。味はたしかだとか。その二階にお寿司屋さんがありました。次回、寄ってみようと思います。「魚寅」のネタならおいしいとおもいます。

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