鴛鴦呼蝉庵日乗
  2001.11.8 歌舞伎観劇記「勢獅子」
 11月7日に市川猿之助の歌舞伎を見てきました。猿之助の地方巡回公演の一つで、「義経千本桜」と「勢獅子」でした。「千本桜」は「椎の木・竹藪・鮓屋」で、早変わりも、宙乗りもないのですが、人情味を出す演目となっています。いがみの権太の猿之助はさすがに独り舞台でした。ただ、「鮓屋」は現代では長すぎて少々見ている方も飽きが来ます。身代わりとなる心情が描ききれていないからでしょう。脚本に問題があります。伝統を守ることも必要ですが、伝統は時代の流れに合わせながら変化して生き残る方が自然です。それゆえ、この演目も脚本を変えるべきでしょう。父親のために自ら犠牲になる所やかたびらの検分など、ぎこちなさが残ります。
 一方、「勢獅子」はなかなかよかったと思います。少し笑也が不調でしたが、ボウフラもよく、獅子舞も細かい所にこだわりがあって、十分楽しめる演目となっています。右近、猿弥がよかったですね。
 猿之助は台詞も演技もさすがです。このような役者は少ないと思います。それゆえにお弟子さんたちの一層の奮起が求められた芝居でした。むしろ、このような巡業公演を続けていく猿之助の姿勢がよいと思います。
 折しも、「千本桜」は平成中村座や国立劇場と、同時に3公演があり、これもまた珍しいのではないでしょうか。

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