鴛鴦呼蝉庵日乗
  2002.09.19 歌舞伎観劇
 9月の歌舞伎座は夜の部です。
 今月の見所は「籠釣瓶」ですね。他のは一応見たという経験があるものでしょう。中村吉右衛門の佐野様は、さすがに実直な絹商人を演じていて、所々の細かい演技が実にいいですね。そして振られる場面でも、自分を押し殺していくところなんかは見せます。最後の場面では真に迫っていて、見終わってからいやな感じが残りました。歌舞伎でこれだけ嫌な気持ちになるのは演者がいいからでしょう。吉右衛門のよさは、視点がしっかりしている点です。他の役者はまばたきが多かったり、視点がさだまらないので、表情がさえない。吉右衛門はそころところ、まばたきも最小限にして視点をきっちり定めるから見ていて安心しますね。有名な役者もまばたきが多いので、視点が定まならいことが多々あります。それゆえ、視点は大切ですね。眼は口ほどにものをいいます。しっかり見据えていくことが大切なのでしょう。今月はなかなかいい演目でした。昼の方もいいらしいのですが、残念ながら行けませんでした。

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