2005.05.10 立場 | |||
森鴎外の「高瀬舟」を読んだ人に感想を聞いたら、喜助のことを話して、喜助のことに思いを寄せたものが多くありました。ただ、「高瀬舟」は役人の立場から喜助を聞いているわけで、読んでいる人は役人の羽田の位置に自分を置いて読んでいるわけです。で、羽田はどう思うのか、それを考えることが語りを意識した視点の問題になります。喜助よりもむしろ羽田が喜助の話をどのように受け止めて、そしてどのように迷っているのか。読者の位置に立つ羽田がどのような苦悩をするのか、それを読み取ることに価値があります。語りを読むことで、語りの構造を理解する。それを踏まえて自分はどのように考えるかの意見を述べる。そこから発展していくと思います。教養主義的な音読や学習がはやっている昨今、教養主義それ自体はいいことなのですが、その上に学習をさせること、学習活動を通して学びを育成すること、そこへの観点ないと、教養主義も活かせません。教養主義の問題点と利点を踏まえてそれを乗り越えたところに新しい価値観が生まれます。 [今日の記録] |
|||
Copyright 黒川孝広 © 2005,Kurokawa Takahiro All rights reserved. | |||||