鴛鴦呼蝉庵日乗
2005.11.28  福助、大隈講堂、「女と影」

 招待いただいたので、見てきました、大隈講堂での「女と影」。で、扉を一つ間違えて入ったので、座席を遠回りしたら、目の前に成駒屋さん、中村芝翫が。いや、舞台を見ているときは、面長で鼻が目立つ、いわゆる「芝翫顔」なのですが、実際に目の前で見ると、これはかなりの美男子でした。あんなにも目が大きかったと思うほどで、役者さんはさすがだと思いました。
  で、舞踊詩劇。ポール・クローデル没後50年研究上演事業として行われた、今回の演目。82年ほど前に、五代目の福助、今の中村芝翫の父君ですが、その演目を、七世松本幸四郎と帝国劇場で演じたとか。それで、今回、中村芝翫の監修のもと、中村福助の演出で大隈講堂に合わせて、つまりそれだけ舞台が狭いということですが、その狭さをものともしない演技でした。やはり、福助は上手いですよ。今回は、中村歌右衛門の所作を入れた型ですから、それは美しさは際立ちます。踊りについても、中村芝のぶと比較したら悪いのですが、それはそれは、止めがきちんとしているから、踊りのメリハリがあって、また、まなざしも、気合いが入っていました。和栗由紀夫さんも名演技で、福助といい息でした。演目も、筋書きを読まなくても理解できますし、影と実物の対比はよく分かりました。ただ、水、雲、月はわかりにくいかもしれませんね。パックを見ていれば、よくわかるのですが。影と女という対比、そしてその向こうの男の執着のみじめさ、わかりやすいのですが、でもそれだからこそ、様式美としてとらえやすいと思います。
  舞台美術では、狭さを感じさせない所がさすがでした。
  ただ、演出では、最後の武士のはどうかと。あれだったら、牡丹や桃の花の枯れるので象徴してもいいのではないかと。
  大隈講堂でああいう演目を見るのは、狂言以来なので、随分と久しぶりです。今回は1回かぎりということなので、遠方の方には残念でしょうけど、伝統文化放送でそのうちに放映するそうです。それまでしばし待たれるがよろしいかと。
  そういえば、中村橋之助はいなかったですね。

 今回の上演については、いろいろと関係者にご配慮いただいて、感謝の次第です。

 帰りに振り向けば、ライトアップの銀杏並木の向こうに、大隈講堂。いや、美しい限りです。

 昼に、しばし、世の物談義。やっぱり、いろいろと意見が交わるのは楽しいことです。

[今日の記録]
睡眠時間:4:00就寝、7:00起床、3:00時間。
最高気温:16度

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