2年間の刊行遅延を経て、
井上敏夫著/野地潤家序・浜本純逸編『教科書を中心に見た 国語教育史研究』2009年9月21日 溪水社
が刊行されました。井上敏夫先生のお仕事については、すでに『国語教育史資料』の解説などでうかがえるものなので、新出資料ということはないのですが、今まで一つの本にしようとする構想はあったものの、ご逝去になり、今回の刊行となりました。野地先生、浜本先生のご出版への意欲があってこそ刊行できた本だと思います。
まずは、目次です。
井上敏夫著/野地潤家序・浜本純逸編『教科書を中心にみた 国語教育史研究』2009年9月21日 溪水社
まえがき 野地潤家 i
第一章 国語教科書の歴史
1 国語教科書の変遷 ----3
2 国語教科書の変遷 明治期 ----69
3 国語教科書の変遷 大正期 ----80
4 国語教科書の変遷 昭和戦前期 ----87
5 国語教科書の変遷 昭和戦後期 ----94
6 明治初期国語教科書に見える句読法 ----101
7 国語読本 拾穂帖 ----109
8 国語教科書・教材 研究の変遷 ----168
第二章 作文教育の歴史
1 明治期における作文教育の内容 ----183
2 作文教授四階級説の系譜 ―明治期の作文指導法― ----202
3 作文と遠足の関係 ―明治期作文題材の変遷考― ---- 214
4 随意選題思想の成立 ----237
5 戦後の作文教育 ----251
第三章 国語学力観の歴史
1 国語学力観の変遷 ―戦前の国語学力― ----265
2 戦後国語学力観の変遷 ----294
3 時代の推移と国語学力 ----308
4 国語科学習内容への追究 ----314
第四章 国語教育通史の試み
1 明治期師範学校における国語教育 ----319
2 大正期の中等国語科教育の変遷 ----347
3 国語教育と大正デモクラシー ----361
4 昭和戦前期の中等国語科教育の変遷 ----378
5 昭和戦中期の中等国語科教育の変遷 ----390
6 文法教育の変遷 ----408
7 輿水理論における否定的契機 ----439
8 単元学習からプログラム学習まで 国語教育戦後二〇年史 ----445
9 戦後中学校国語科の変遷 ----463
10 戦後教科教育史 国語科編 ----483
第五章 国語教育人物史
1 種蒔く人、垣内先生 ----509
2 石山脩平先生の『教育的解釈学』のころ ----513
3 敬仰 西尾先生 ----522
4 鳥山榛名氏をしのぶ ----524
5 追慕 山口喜一郎先生 ----526
6 追慕 古田擴先生 ----528
7 滑川道夫氏 ―国語科的教養の典型― ----534
8 解説 大村はま先生 ----537
9 敬仰 石井庄司先生 ----553
10 名コックス 倉澤先生 ----555
所収論考初出一覧 ----558
井上敏夫先生 年譜 ----560
井上敏夫先生 業績一覧 ----562
あとがき 浜本純逸 ---- 569
索引 ----590
出版不況にありながら、このような重厚な本が出版できたのは、今後の国語教育研究にとっても、礎となるのではないかと思います。
さて、今回の版下ですが、結局基本的なIDのフォーマットに依存することにしました。もう少し工夫が必要だと思っていたのですが、あまり作業を入れることで、見えない不具合が出ることを懸念しました。それで、基本的なものにして、あとは部分調整をすることにしました。ちょっとしたカーニングは入れてますが、本文ではあまり手を入れてません。ただ、心残りだったのが、引用部分の行間をもう少しせまくしたかったのですが、そうすると、あとの本文との隙間が不均等になることに気付いて、断念しました。行間作業をしておけば、1台、つまり32頁近く減らすことが出来たと思います。それすれば価格も9000円を下回ることも出来たかなと。あとは、ゴシックの使い方があまりうまくなかったかと思います。全体として本文は少し弱い印象になっていると思います。この印象についてはこれから検証して浜本先生の国語教育論集と比較してみたいと思います。
引用文献参照については、3冊の教科書を見ることが出来ずに、そのままとなってしまいました。2冊はどこの図書館にもなく、所在不明だったのです。1冊は図書館にあったのですが、あいにく展示会に出品のため、見ることが出来ませんでした。一般書籍については、5冊程度残してしまいました。これは時間的に厳しく、あと少しあれば調査できたので残念です。
補注については調査段階で考えたことをまとめて、浜本先生の校閲を得ましたが、まだ気になっているのが『小学教授書』で、もしかしたら、二巻と一巻の刊行年は1年ずれていたかもしれません。これからの調査が必要です。教科書の刊行について、業界や文部省での一覧があればそれを確認できたのですが、まだそこまでの調査はできませんでした。甲斐先生に相談すればよかったかなと思います。明治期については、甲斐先生、府川先生のご専門ですから、事前相談をよくしておければよかったと今から反省しきりです。
索引については浜本先生の選定のものを編集しました。段間に罫線を入れるか入れないか迷いましたが、入れないことにしました。これは、他書にならって入れれば読みやすかったかもしれません。
刊行されてから、どこか誤植や誤記はないかと不安で、責任を痛感しているのですが、刊行されてすぐですから、まだそのようなご指摘もないので、これから出てくるだろうと思います。
ただ、このように先人の業績をしっかりと記しておいて、これからの研究の指針となるべく編集することも、研究の一つではないかと思っています。いずれ火曜会の仕事の続きをしていくことができるのではないかと。そしていずれ以前の国語教育史学会の記録を残すことも必要かと。西原先生のご遺族の方とお話できたので、いずれそのあたりも尋ねてみます。
まだ情報が不十分な時代にこのような教科書研究をしっかりと残された井上敏夫先生に御礼したいのと、この本に関わった多くの方に御礼を申し上げたいと思います。2年間もかかってしまったことは反省しきりですが、一先ずここまでできたというのが実感です。仕上げられてよかったと、安堵もあります。
そしてようやく自分のことに取りかかり、そして先のことにとりかかります。まず、いままでのまとめ。そして、大正期から昭和初期を考察して、戦後への継承関係のまとめ。それと同時に、授業継承関係の理論の完成。実証と方法分類とをしてまとめたいと思います。まだまだ先は遠いですが、一つ一つ、整理すること、それは研究と実践をつなぐ架け橋です。研究することは自分のためだけではなく、多くの児童・生徒を救い、教師を救うためにあるのだという理念を持ちつつ、進めたいと思います。
[今日の記録]
7:30就寝、11:30起床。
天気:晴
最高気温:23度
最低気温:18度 |