2001.9.23 歌舞伎観劇記「米百俵」 | |
前回(9月13日)に続いて、歌舞伎観劇についての報告です。 米百俵 いろいろ政治がらみでこのことばが有名になりましたが、佐久間象山の弟子である小林虎三郎は長岡では有名でしたが、この政治がらみで有名になりました。役としては、やはり吉右衛門の演技は他の追随を許さないほど、情熱的な虎三郎を演じていました。それと、橋之助が喜平太を演じていて、その青年の無鉄砲な純粋な心情を好演していました。歌昇は安定した演技で、染五郎もよかったと思います。ただ、なにせ脚本がよくないようで、せっかくの配役もどうも本の内容がしっくりいかず、もったいないものとなりました。戦後2回しか演じられていないのも、その内容からみてうなづけます。役者はよいとしても、全体のつくりに問題が残りました。ただ、おもしい収穫があって、虎三郎が寝るときに、角帯を前にして、結びを変えて寝ていました。そうすれば、すぐに起きることができます。また、若い藩士が入ってくると、羽織を着るということ、それは当時の礼儀でした。そういえば、昔、恩師の櫻井光昭先生が、昭和30年代にワイシャツを着てお客さんを迎えたら、わざわざ正装していただいたと言われたということです。現在では、部屋着はジャージということもありましょう。やはり、いつでも客人を迎えられる格好というものは大切かもしれません。 紅葉狩 やはり雀右衛門の舞踊はさすがです。特に表情に注目してください。姫が変化の素性を出すときの目つきは、それは見事です。さすがの演技でした。雀右衛門の変化はなかなか怖く、迫力がありました。以前は玉三郎でしたが、これは、舌を赤くして、なかなかおもしろいものでしたが、雀右衛門だと迫力があります。内容としてはおもしろいものです。東蔵、友右衛門の演技が光っていました。ただ、問題は梅玉です。別に梅玉が嫌いではないのですが、どうも視線が定まらず、安定していません。特に、問題はまばたきです。これは、松江にも言えますが、雀右衛門や吉右衛門のまばたきのタイミングをみると、せりふを言うときは、ちゃんと見計らっています。しかし、梅玉は頻繁にまばたきをして、視線も落ち着きません。菊五郎もまばたきが多く、視線をふらふらさせるので、時折演技が上の空になるのと同じです。梅玉は眼の表情ができず、また玉太郎が舞っている時に、松江とひそひそ話しをして、その松江もそれを聞いて笑うなど、どうも不謹慎というか、舞台全体のじゃまをします。しぐさも武士としてのしぐさができず、杯を上げるときも、手の動作が安定していません。梅玉は時折そのように舞台でちゃかしたようなしぐさをするのが難点です。その結果、見ていて不快な印象を与えてしまいます。このあたりはぜひ年輩の人から注意しないと本人のためになりません。せっかくの雀右衛門の演技がだいなしになってしまいます。それでも梅玉のよい点は、最後の幕切れの所での見栄はさまになっていました。 女殺油地獄 染五郎が博多につづいて与兵衛を演じていました。若いのに、仁佐衛門の監修がいいので、歌舞伎といよりも、現代劇と融合した形で若い人につながる演出でした。孝太郎のお吉は、若くて多少色気があって、与兵衛のことが気になる様子を表していたと思います。染五郎は好演といってよいでしょう。欲を言えば、最後にお吉をあやめる時に、親の心情を理解して改心するのですが、その親に迷惑をかけたなくい一心でお吉を刃傷するまでの葛藤をうまく顔の表情であらわして欲しい点と、油にまみれる場面で、すぐにころぶのではなく、やはり、バランスを崩してころぶのですから、もうすこしゆっくりころぶとリアリティが出ると思います。それでも、このように若手に大きな役を与えるのは、若手を延ばすチャンスですので、今後もどんどん挑戦してほしいて思います。その分ベテランが出られませんが、ベテランはベテランの味を出してがんばって欲しいと思います。なかなか見所の多い演目でした。 ◇ 幕間にわらび餅を味わったのですが、なかなかの美味でした。特に抹茶味はおいしいです。それと、売店に「えびすめ」がありました。これは、ご飯の友として重宝します。いつもは抹茶アイスを食べるのですが、さすがに今日は涼しいので、遠慮しました。それにしても歌舞伎座の食事は高いですね。3500円ぐらいならよそでもおいしいものが食べられます。以前、大坂の松竹座の柿落とし公演を見たときに、地下の食堂で昼食を取ったのですが、それは3000円でとてもおいしいものでした。東京でもおいしい食事を出してほしいと思います。観劇と食事はセットですから、いい演劇にはいい食事というものでしょう。また、歌舞伎座の座席は工夫しないと前の人の頭で舞台が見えにくくなっています。これも時代とともに変えるべきだと思いますが、実現は不可能でしょう。 次の歌舞伎観劇は国立劇場です。また楽しみです。 |
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