鴛鴦呼蝉庵日乗 2003
  2003.07.28  文学散歩

 紀之床は、石川啄木の下宿ですが、その付近から歩くと、樋口一葉の旧居に行き着きます。しばらく歩いて、本郷の鴎外の作品に出てくる雁の坂がありますし、その付近は漱石の「こころ」の散歩道でもあります。その際に大切なのが視点ですね。作家の生い立ちとしての記録をたどるだけなのか、いや、その環境を見ることで、作家がどのように考えていたかを想像していくのか、などと考えられますね。文学散歩が散歩ではなくて、作家の背景を理解する、文化を理解することならば、カルチュラルスタディーズとして存在価値を認めていいわけですが、そうでない場合は、古い道を見て、この道も平安の人が通ったのかという想像になってしまいます。
 どう考えてもあり得ないのですが、「この木を紫式部も見た」というような、歴史上の人物が見たかのごとくに述べること。木の寿命からみても、紫式部のいた頃の木はすでにないと思います。あっても、ごくわずかですね。天然ならば特に。木の寿命はそれぼと長くはないのですから、同じ風景、同じ木を見たかは定かではありません。
 だから、想像しているのです。

 ゆかりの値を歩くことは事実を調べるという側面の一方で、想像して楽しむという側面をもっていると思います。想像は現実とは違う感覚なのですから。

 全国大学の最終決算の確認を実行委員会を開きました。これでようやく終了です。

 何人かと研究計画について議論。視点をどのようにして確立していくかが問題とのこと。そして日曜日の田近研究室での話と重なり、評価の視点が確立していないことの指摘がありました。

 9:30就寝、11:30起床、2:00睡眠。


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